東アジアにおける戦時性暴力とフェミニズム(宋連玉さん・山本めゆさん) ※開催延期

※コロナウィルス感染拡大を受け、本講座の開催を延期することといたしました。
延期の日程につきましては、またあらためてご案内いたします。

講義要旨
この講座では、フェミニズムの視座にたちながら、東アジア諸地域に対する帝国日本の植民地支配と密接に結びついた戦時性暴力の歴史についての理解と認識を深めていくことを目的とします。その際には主なテーマとして、日本軍「慰安婦」問題と、敗戦後の旧植民地からの引揚時の性暴力問題を扱っていく予定です。そのうで、これらのテーマを同時に問題化することのできるフェミニズムにはどのような視点が求められているのか、そして、わたしたちは戦時性暴力の問題にどのようにかかわることができるのかなどについて、参加者の皆さんとともに考えていきたいです。(事務局)

《前半》1990年代初めに金学順さんがカムアウトして以来、世界的に「慰安婦」問題への関心が高まり、資料の発掘や証言の記録、個別研究など多くの成果を得ながらも、30年間、議論が続いている点は公娼制と「慰安婦」制度の異同である。この議論を代表する二人の研究者、吉見義明氏と秦郁彦氏はこれまでも大衆的メディアを通じて対談をしてきたが、吉見氏は公娼制と「慰安婦」制度は本質的に異なるとし、秦氏は「慰安婦」制度は公娼制だから国家の責任は問えないとする。
連続講座では植民地朝鮮で移植された公娼制の実態を明らかにしながら、女性の人権という観点からすると吉見氏・秦氏の議論で積み残された課題について考えてみたい。
(講座の大まかな流れ)
①朝鮮開港と吉原遊廓上陸の背景
②日清・日露戦争と疑似公娼制の導入
③朝鮮軍と「植民地公娼制」;植民地権力にとっての性売買の多面的意義
④国家権力から見た公娼制・「慰安婦」制度;帝国は買春?売春?

《後半》1945年8月以降、朝鮮半島北部や満洲に残された民間人は剥き出しの暴力に曝され、とりわけ性暴力は酸鼻を極めた。彼女たちが上陸した引揚港の周辺では、厚生省・引揚援護院主導で中絶と性病治療が実施されている。引揚者の性暴力被害は近年多くの関心を集めているが、同時に「保守」系言論界でも「慰安婦」問題のカウンタークレイムの材料として重用されるようになった。性暴力被害が歴史修正主義の言説的資源となることを許してきたものは何だったのか、われわれはそれをいかに問い直すべきか。現代日本のフェミニズムにとって大きな課題といえるだろう。後半全四回の講座では、以下の三点を問いたい。
①「保守」系言論界との親和性という陥穽について:女性たちの被害経験が歴史修正主義的な主張に力を与えてきた背景を検討し、植民地支配の彼我を軽視して性暴力被害のみをセンセーショナルに報じることの危うさを確認する。
②性暴力被害は何を語ってきたのか:満蒙開拓団の女性たちのなかには、極限的な状況で「団を守るため」としてソ連兵に差し出された被害者がいる。重層的な被害-加害関係に関する彼女たちの記憶と語りに注目する。
③厚生省・引揚援護院が性暴力被害者に強い関心を寄せたのははなぜか:女性たちの身体が「混血児」と性病という二つの脅威の宿主として危険視されていたこと、中絶が「望ましい児」とそうでない児の選別という側面を持っていたことを明らかにする。

講師
《前半》宋連玉(そん・よのく)さん
大阪生まれの在日朝鮮人2世
青山学院大学名誉教授
植民地主義が朝鮮女性の生と性をどのように変えたのかに焦点をあてて研究しています。とくにこの30年の研究関心は植民地主義から見た公娼制と「慰安婦」制度の関係性にあります。

《後半》山本 めゆ(やまもと めゆ)さん
社会学、ジェンダー研究、レイシズム研究。日本大学文理学部社会学科助手。文学博士(京都大学)。
主要論文に、「性暴力被害者の帰還――引揚港における『婦女子医療救護』と海港検疫のジェンダー化」蘭信三・川喜田敦子・松浦雄介編著『引揚・追放・残留――戦後国際民族移動の比較研究』 (名古屋大学出版会、2019年)、「<ジェンダーをめぐるキーワード>『引揚げ』とジェンダー」『ジェンダー研究』(ジェンダー史学会、 第14号、2019年)など。

スケジュール
①10月11日(日)13:00- (宋さん)
②10月25日(日)13:00-(宋さん)
③11月8日(日)13:00-(宋さん)
④11月22日(日)13:00-(宋さん)
⑤12月6日(日)13:00-(山本さん)
⑥12月20日(日)13:00-(山本さん)
⑦1月17日(日)13:00-(山本さん)
⑧1月31日(日)13:00-(山本さん)

会場
Books×Coffee Sol.(東九条、京都駅八条口徒歩7分)
https://www.sol-ep.com/

参加費
一般:8000円/8回
学生・非正規・無職:4000円/8回

定員
10名程度。

申込み
※8月・9月頃に募集いたします。